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- 苺電波コラム 第108回 -

「マイナー症候群」


私が苺電波部に入るきっかけとなった To Heart が発売されたのは 1997 年. この年に私が遊んだ 18 禁ゲームを振り返ってみると,LEAF,アリスソフト, F&Cと当時も今もいわゆるメジャーとされるところばかり. それが今はどうだ. 君望知らない,月姫しらない,AIR知らない…. 周りで大騒ぎされたゲームはちっともやっていない. すっかりマイナー指向な18禁ゲーマーになってしまっている. 他の苺電波部員やWeb日記を書いている人達との共通話題も減る一方.

もっとも私のマイナー指向は18禁ゲームに限ったことじゃない. 映画DVDにしてもハリウッド発の大ヒット作品は殆ど買うことはなく, フランスやイギリスといったヨーロッパの映画の方が多い. 音楽にしても昔ガールポップが流行ってた時にはレベッカやプリプリじゃなくて渡辺美里とか小比類巻かほるをよく聞いてた. 馬券買う時も一番人気よりも二番,三番人気の馬を買いたくなる. そんな感じ.


いや,マイナーというのとは少し違うか. 自分の周りで多くの人が騷いでいるモノを敬遠したくなるという方が正しい. そして,この「自分の周りで」というのが曲者. 18禁ゲームは娯楽全体からすれば昔ほどでは無いにせよ狭い市場だし, 私が見るフランス映画は日本では見る人は少なくても当地に行けば大抵ヒット作品だ. もちろん「マイナー」は他と比較することでしか現われようのない言葉なのだけど, 結局は自分の目が届く範囲,興味の及ぶ領域内でしか比較してないってことか. まぁ,定義域をいちいち定義するのも面倒だ. このままいい加減に行かせてもらおう.


同じ事の繰り返しになるけど, マイナー指向の最大の原因は周りの人と同じ事をやりたいと思わない性格なんだろう. 興味が多少あっても周りである程度流行しちゃうと「まぁいいか」という気分になる. 執着もあまりない. そこで執着するぐらいのことだったら流行する前に手を出してるだろうと思っている節がある. 加えてミーハーかつ飽き易いという性格が拍車をかける. マイナーな頃はかなりコアなファンだったのに人気が出てきて知名度が上がると冷めるといった経験には身に覚えがある.

もしかするとある種の渇望感なのかもしれない. 自分が好きな物を好きな人にやっと会えた時の感覚. あのゲームのあそこの台詞いいよね,この映画のあのシーンがいいよねって. そういえば音楽雑誌に1ページだけ取り上げられてるのをわざわざ読んだりしたっけ. きっと似たようなことなんだろう. 対してメジャーな物は情報も豊富だし思いを語る相手もたくさんいる. けれど私は容易に手に入るようになると欲しいとあまり思わなくなる. だから,満たされず,けれど時々望みがかなうぐらいが丁度いいらしい.

もちろん他にも,メジャーなものに時々見られる狙われた普遍性, ある種マーケティング的に織り込まれたものの匂いが嫌いだとか, 色々要因はあるのだろうし, 何が自分のマイナー指向の原因か自分で完全に理解しているわけでもない. でも,鍵の一つは程良い渇望感なのだと思う.


満月より半月の方がせつないけど,好き. メジャーなものよりマイナーなものが好きな私は決して幸せにはなれないのかもしれないけど, そんな自分が好き.


次回の苺電波コラムはごうです。


baru@denpa.org