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- 苺電波コラム 第7回 -


Kanon Sound System

夢は実現した時よりも見ている間の方が幸せかもしれない…

あなたにも経験があるだろう。
新しい“おもちゃ”を手に入れる前、集めたパンフレットを床一杯に広げて一つ一つをつぶさに比較したことが。
雑誌の記事の評価記事を穴が開くほど読み、白黒の小さな写真に添えられた一言に一喜一憂したことが。

今回紹介する『Kanon』の音楽を聴くためのStereo Systemもまた、そんな夢の一つだ。
取り上げるComponentのすべてを聴いた訳ではないし、まして本当に組み上げて『Kanon』の音楽を再生した訳でもない。
実際に組み合わせた結果が良くなかったからといって

「うそつき…」

とは言わないで欲しい。


CD Player

爽やかな春風…本機を試聴した時の印象だ。もちろん『Kanon』の舞台は雪に閉ざされた冬の街である。しかし、名雪の言う通り、冬にはいつか終わりがくる。劇中に流れる音楽だって冷たく暗澹としたものばかりではない。春風を思わせるような嫌味のないすっきりとしたきめの細かい本機のサウンドは、繊細な『Kanon』の音楽に最適。余計な力の入った迫力は無用。確かな存在感があればそれでいい。

また、本機はD/A converterとしても動作可能。RCA同軸とTOSの両形式に対応しているので、もし、あなたのサウンドカードがdigital出力可能であれば、劇中のBGMも高品位に再生可能だ。

marantz
CD-17Da

Amplifier

Aura
British Stingray

今回は音だけでなくデザインにも気を配り、『Kanon』のイメージに合うように選んでいる。では、『Kanon』のイメージとは何だろう? それは読んだ人の数だけあるに違いないが、敢えて選ぶとすれば、作中で繰り返し登場し印象的に使われている小道具…“雪”ではないだろうか?

CD Playerはアルミダイキャスト筐体のしっとりとした銀色。ここで選んだAura Brithish Stingrayは艶やかなステンレス仕上げである。薄い筐体にシンプルな操作パネル。黒い小振りのヴォリュームノブを回すとしっかりとした手応えがあり、鳴りだす音は冷ややかな外観に反した、バランスの整ったナチュラルなものだろう。『Kanon』で使われている音域を無理なく描き出してくれるはずだ。

Speaker

あゆの羽根。それは震え、時に彼女の感情を表現する。嬉しい時、悲しい時、不安な時…

このSpeakerにも震えて音楽の感情を表現する羽根がある ― 正確にはリボンであるが。高音の再生を担当するトゥイーター。本機は独自に開発されたLiner drive ribbon型を採用し、音楽の雰囲気、空間感を演出する超高域を美しく再生する。高域に強いというと硝子のような繊細で冷たい音を想像するかもしれないが、そうではない。音の傾向としては柔らかく低域優先のゆったりとしたもので、音と音の間に広がる空間が無色透明なのである。その空間が演出する雰囲気はあなたの部屋を“約束の場所”にするだろう。

Piega
P2

Speaker Stand

TAOC
SST-60

居場所。心を許して自分のあるがままに居られる場所。Speakerにはそれが特に必要である。あなたがSpeakerを愛してやることはもちろん必要であるが、物理的に安定した場所も提供してやらなければならない。多くを求めれば部屋のあり方から論じることになるが、まずは安定したスタンドを用意しよう。

本製品は入門用にして標準。小型Bookshelf Speakerであれば大きな不満はないだろう。

Cables

考え抜かれた出来事を繋ぐ日常描写。なんでもない会話にふと微笑みを漏らしてしまった時…あなたは物語の中の人物になっている。そして、そんな幸せがいつまでも続けばいいと…

選び抜かれたComponentを繋ぐCableもまた、しっかりとしたものを選ばなければならない。自己主張し過ぎず、Componentの魅力を引き出すことが肝心だ。

CD PlayerとAmplifierを繋ぐInterconnect cableにはACROTEC社の 6N-A2300 を選ぼう。その緻密さは細やかな雪の結晶を描ききり、澄み切った美音は真っ白な雪のようにすべてを覆い隠し、美しい音の景色を目の前に創りだす。

AmplifierからSpeakerへは素直に情報を伝達するAUDIO CRAFT社の SLX。透き通るように透明で解像度が高く、すべてを曲線で表現するようなしなやかさは、雪の街の純粋さと優しさを顕わしてくれるはずだ。

ACROTEC
6N-A2300

AUDIO CRAFT
SLX


夢は見ている間が幸せ…

表面的にはそれは真実だろう。
慎重に検討し、試聴を何度も繰り返しても、揃えたComponentsが想像通りに鳴ることは“奇蹟”でも起きない限りまずない。

自分の音を追い求めること。
それは醒めない夢を見続けるのに等しい行為かもしれない。
時間をかけて、自分の感性をSystemに反映させていく。
思った音が出せるようになるまで、7年くらい待たされるかもしれない。
そんなゆったりとした趣味もいいじゃないか。

― 求める者にだけ、奇蹟は起こる。

今回ご紹介したComponent
marantz CD-17Da\ 99,000
Aura British Stingray\ 150,000
Piega P2\ 240,000(pair)
TAOC SST-60H\ 38,000(pair)
ACROTEC 6N-A2300\ 3,2000(1.0m)
AUDIO CRAFT SLX\ 7,800(1.5m pair)
total\ 568,800without tax
参考文献
Audio Accessory 91, 音元出版
Audio Accessory 92, 音元出版
HiVi 04/1999, ステレオサウンド
SOUND PAL 99 SUMMER, 小学館
Stereo Sound 130, ステレオサウンド
オーディオケーブル大全 '99, 音元出版

次回の苺電波コラムは ごう の予定です。


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