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- 苺電波コラム 第83回 -

「分析 とらハ3」


今回は昨年末発売されましたivory製作、 JANIS発売の『とらいあんぐるハート3〜Sweet Songs Forever〜』について書きたいと思います。 とらハ3を一通りプレイし終わった後、私が抱いた感想は 『3は明らかにとらハであるが違和感がある』といったものでした。 その違和感の正体について私なりの解釈を述べたいと思います。 ということですので、 今回のコラムはとらハシリーズをプレイされていることを 前提としていますのでご了承ください。 なお、事前注意ですが、私はこのコラムの内容をもって とらハ3を弾劾するつもりも否定するつもりもありません。 とらハ3自体は佳作だと考えています。


▼まず

とらハ3の違和感について語る前に、 私なりのとらハ1、および2についての解釈を書いておきます。 とらハ1は強烈なあまあまらぶらぶのベクトルで構成されたゲームです。 無論、それ以外の要素も存在しますが、人気の秘訣はそこだったと認識しています。 つづいて発売された『2〜さざなみ女子寮〜』では 1にあったあまあまらぶらぶのベクトルは減少しました。 これをもってとらハ2はとらハ1のベクトルを評価していた人には不評もあったようです。 事実、私も違和感を感じていました。 しかし、ほのぼのホームドラマという大きな要素が追加され 結局はその合成ベクトルが大きい意味で『とらハ』を表す要素であると認識されたわけです。

まとめますと、とらハ1は『らぶらぶもえもえ(100%)ベクトル』、 とらハ2は『らぶらぶもえもえ(60%)+ほのぼのの合成ベクトル』だったわけです。

▼とらハ3の場合

そして同様のベクトル論でとらハ3を語る場合はこうなると考えています。 とらハ3では『あまあまらぶらぶ』の要素が2よりもさらに減退し 『ほのぼの』要素がさらに増加しました。 さらに1、2では薄かった『物語性』という部分が強くなっています。

まとめると『らぶらぶもえもえ(15%)+ほのぼの(120%)+燃える物語の合成ベクトル』になるわけです。

結果的に1や2とはかなり違った方向にベクトルが伸びてしまい、 簡単には拭えない違和感の原因になっているのだと考えます。 特に大きいのは『あまあまらぶらぶ』要素が大きく減退した点にあるでしょう。 1からプレイしている人にとっては、 心のどこかに「あまあまらぶらぶこそとらハの重要要素である」という認識があるために 3での減退程度がさらに鼻につくわけです。 しかし、内部要素としては「ほのぼの」が強いため 「とらハである」ということは崩れておらず、 『とらハなのに私の思うとらハじゃない』といったような違和感を生んでいるのです。

▼主人公に見る原因

ではなぜに『あまあまらぶらぶ』がそこまで減退したのかという点についての原因分析です。 ここではそれについて各主人公に焦点をあてていきます。

1の主人公である真一郎はちょっとつっぱってますが、 基本的には優しい甘えたがりな青年です。 そのためヒロインと恋人関係になると同時に一種の共依存関係が発生し、 余計に強烈なあまあまらぶらぶ要素が発生していました。 また2の主人公である耕介は基本的に頼れるお兄ちゃん、 ぼーっとしつつこまかいフォローのできる好青年という人物です。 彼の場合相手に依存するかどうかは相手によって違ってきますが、 どちらにしても比較的わかりやすく相手を見守っているわけです。 ともかくどちらも一定の存在感を持ち、内面もわかりやすい主人公といえます。

では3の主人公である恭也はどうかという点ですが、 彼という人物が非常にわかりにくいのです。 確かに彼には『小太刀二刀・御神流の使い手であり、美由希の師匠である』という 大きな設定がありますし、物語全般を通して非常にストイックに、 自分の使命を果たそうと奔走しています。 ただその行動理念が前2作の主人公と比較すると、 あまりにも一般的ではないため、彼の人物像は非常に理解しにくくなっています。 彼は彼なりに恋人関係になった相手に対しては甘えたりしているのだと思うのですが、 それは普通に見るとよくわかりません。 結果として彼とプレイヤーがシンクロ仕切ることなく物語は終わってしまうのです。 結果として『あまあまらぶらぶ』要素は表面上なりを潜めてしまうわけです。

▼まとめ

以上のような点が、とらハ3の違和感に対しての私の認識です。 結局求めていたものと違うものが出てきただけじゃないかと言われるかもしれません。 求められたものをただ出すだけのクリエイターなんて要らないというのもまた真でしょう。 そういう意味でもこの『とらハ3』の存在は嬉しく思います。 そしてこれもまた『とらハ』であることは疑いようがありません。 『とらハ3』は「とらハ」が好きだという人には是非プレイしてもらいたいと思っています。


次回の苺電波コラムはごうです。


Azumi Shinonome(azumi@denpa.org)