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- 苺電波コラム 第103回 -

「ギャルゲーマシンのためのPCパーツ選び2001 音響編」


まずは先日の 映像編 に対して Web 日記上でいくつか反応があったので,以下に一通り列挙しておきます.

それでは音響編行ってみましょー.


ギャルゲー以外の要素

「ギャルゲーマシンのためのPCパーツ選び2001 音響編」とは銘打ってはみたものの, 実のところサウンドカードについては, むしろギャルゲー以外の要素で候補が限られることが多いのが現状な気がします. 例えば以下にあてはまる人は要注意かもしれません.

こういった条件を満たすサウンドカードを欲しい場合は, ギャルゲー向きかどうかはとりあえず置いといて, 以上の条件を優先して探した方が良いでしょう. 確かに最悪の場合買ったサウンドカードがギャルゲーに向かないこともあるのですが, ソフトウェアで弱点を解決したり,サウンドカードを 2 枚挿したりと, 金の力で解決できることも多いです. 本当にどうしようも無い場合はゲーム用に PC をもう 1 台作るという究極の解決策もありますし(汗


対応 OS とドライバの種類

Windows2000 が出てしばらく経ったこともあり, Windows2000 に対応しているゲームも増えてきました. できれば Windows2000 で動作するサウンドカードを使いたいという人もいるでしょう.

Windows2000 でのサウンドカードの動作状況ですが, 問題無く動作しているものから一部機能のサポートに留まっているもの, 果てには古いカードの中には完全にサポート外なものもあります. こういった状況の原因はデバイスドライバにあります. Microsoft は Windows2000 と Windows98/98SE/ME の両方で動作する WDM ドライバに移行したがっていますが, サウンドカードではこの移行は遅れているのが現状です.

もう一つのドライバは VxD ドライバと呼ばれており, Windows95/98/98SE/ME で使用可能です. これらの OS では VxD ドライバと WDM ドライバと両方ある場合, 一般には VxD ドライバを使った方が無難とされています (たまに ESS Allegro みたいに WDM ドライバの方がまともに動く例外もありますが). それから,Windows98/98SE/ME においては, 通常は VxD か WDM か適当な方が選ばれてインストールされるので, この 2 つのどちらが使われているかを意識する必要はあまりありません.

なお,サウンドカードの外箱等に「Windows2000 対応」 と書いてあっても最小限の機能しか実装していなかったりとアテにできません. どの程度の機能がサポートされているか前もって調べておくことをお勧めします.


どの機能に着目して選ぶか

最初に書いたようにギャルゲー以外でサウンドカードが限定される場合もあるのですが, この先はギャルゲーのことだけ考えて話を進めることにしましょう.

まず, 最近のギャルゲーにおいて音声の再生がどのように行われているか考えてみると, 以下の 3 つに大別されることがわかると思います.

  1. PCM 再生 (DirectSound によるものも含む)
  2. CD-DA 再生
  3. MIDI 再生

また,再生手段とは別に以下の観点もサウンドカード選びに影響すると思われます.

以下,それぞれの項目について見ていきましょう.

PCM再生

PCM 再生はギャルゲーの音声再生において最も使われる頻度が多く, かつ重要なものになっています. これは DirectSound による BGM 再生をするゲームが増えていること, BGM,効果音,声を多重再生するゲームが普通になっていることが理由です. また,一部 DirectMusic を使うゲームにおいても DirectSound 性能が影響します. これは DirectMusic を直接ハードウェアでアクセラレーションするサウンドデバイスが今のところ(殆ど?)無く, 実際には DirectSound 経由でソフトウェアエミュレーションされるからです.

もっとも,PCM 再生については, 現在普通に売られている PCI サウンドカード, 統合チップセット(映像編参照) のサウンドデバイスでは殆ど問題は起きないと思います. ただし,44.1kHz デジタル入出力で人気の CMI8x38 系のサウンドカードは DirectSound の多重再生負荷が高いと音切れ等の問題が起きる場合があるようです. あと,流石に ISA のサウンドカードでは厳しいでしょう.

ところで DirectSound の多重再生,mp3 による BGM 再生ですが, ある程度 CPU パワーが必要となるので, あんまり古い CPU だと厳しいゲームが多いかもしれません. もっとも,これも 300 〜 400MHz クラス以上の CPU ならまず大丈夫なので, 2000 年以降の PC なら殆ど問題は起きないでしょう.

CD-DA再生

Windows での CD-DA 再生の方法は現在 2 種類に大別されます. ひとつは CD-ROM ドライブからサウンドカード (オンボードサウンドの場合はマザーボード)への配線を経由して再生する方法です. この配線が 3 or 4 線式であればアナログ信号による伝送ですし, 2 線式であればデジタル信号による伝送です. もうひとつはCD-ROM ドライブが読み取ったデジタル信号を直接 Windows のオーディオデバイスから再生する方法です. この方法は CD-ROM ドライブからサウンドカード等への配線が不要で, 薄型 CD-ROM ドライブを使っている場合に多いようです. なお, この方法で CD-DA を再生するためにはオーディオデバイスのドライバが WDM ドライバである必要があります.

2 つの方法のうちどちらを使っているか区別する方法ですが, コントロールパネル→マルチメディア→音楽 CD に 「この CD-ROM デバイスでデジタル音楽 CD を使用可能にする」 という項目があります. この項目にチェックが入っていたら後者の方法で再生されています.

前者の方法で CD-DA を再生している場合は, サウンドカードにより性能や安定性が変わることはありません. そういう意味では注意する点はあまりありません.

ただし音質は変わります. アナログで接続している時はもちろんですが, デジタルで接続している時も音質は変わります. 更に言えばサウンドカードからデジタル出力して外部 D/A コンバータを使う時でさえも音質は変わります. 全てデジタル処理ならサウンドカードによる違いは無さそうなものですが, 実際には CD-DA の 44.1kHz からサウンドカードのデジタル出力 48kHz に サンプリングレート変換する部分でサウンドカードによる差が出ているようです. このサンプリングレート変換が比較的まともなのが YMF744/754 で, 一方,以前評判が悪かったのが Sound Blaster Live! です (最近は改善されているという話もあります). まぁ,この辺の違いは気にならない人にとってはどうでも良いのですが, 気になり出すと「Kanon の Track 18 の何分何秒あたりで音がビリつく〜」 みたいに気になって止まらなくなるので注意して下さい(^^;;

後者の方法の場合は, PCM の多重再生が問題無くできるサウンドカードと CPU の組み合わせで, かつ WDM ドライバがまともに動作するならばそう問題は発生しません. ただ,この WDM ドライバがまともに動作する,ってのが結構クセモノで, サウンドカードによっては音切れとかが発生することがあります. 薄型 CD-ROM ドライブを使っているスリム PC 等では後者の選択肢しか取れない場合もあり, サウンドカードのアップグレードの選択肢を狭くしています.

MIDI再生

以前は CD-ROM 内の声データにアクセスしながら BGM が低負荷で再生できるというメリット故に比較的多かった BGM の MIDI 再生なのですが,ここ 1, 2 年でかなり減ってきています. DirectSound や DirectMusic を使ったゲームの普及により, MIDI でないと BGM が再生できないゲームは近いうちに殆ど無くなるでしょう. ソフトウェアシンセという解決策が CPU パワーの向上により普通に使えるようになった今, サウンドカードのハードウェア MIDI 再生性能の重要度は低くなったと言えます.

ただ,ゲームによってはソフトシンセだとハングするものが一部あるので, MIDI を使っていた昔のゲームも確実にプレイしたい, という人は YMF754/744 を選ぶのも良いかと思います. 他には YMF7x4 よりは品質が落ちますが, Creative の VIBRA128 (旧 Ensoniq 系)とか, ESS の Allegro あたりもそこそこ MIDI の再生品質が良いです.

最終手段として外部 MIDI 音源という手もあります. ゲームをやるだけなら昔の機種(SC-55ST/mkII, SC-88, MU10/50/80/90/100) の中古品でも十分ですし,そこそこの出費ですみます (とはいえ,サウンドカードに比べるとかなり高いですが…). ただ, 最近は接続の面倒さと場所を取ることから外部 MIDI は敬遠される傾向にありますね.

音質

PCI サウンドカードになってから, ISA 時代に比べればカードによる音質差は小さくなってきた感があります. とはいえ,カードやチップによる差はあるので, 気になる人は注意した方が良いでしょう. また,統合チップセット等のオンボードサウンドはどうしても音質やノイズで不利になるようです.

音質を特に気にする人はデジタル出力を使った方が良いと思います. 以前に比べデジタル出力を持ったサウンドカードが安価に手に入りますので, 外部 D/A コンバータ(MD デッキ等を含む)を持っている人なら試す価値はあります.

一方,アナログ出力の音質ですが, 高価なサウンドカードで音が良いのはある意味当たり前なので, 比較的安価なサウンドカードに限って話をします. 私の知る範囲では音質が良いと感じたのは Hoontech のカード, CMI8738 や YMF7x4 を使った LabWay のカード(Xwave シリーズ)でしょうか. 続いて YMF7x4 を使った AOpen のカード,CMI8738 を使ったカード, Creative の VIBRA 128, もう一段落ちると ESS Allegro を使ったカード,といった感じです. 逆に避けた方が良いのは,FM-801 系のチップを使ったカード, ESS Maestro 以前のチップを使ったカード, Formosa や DCS の出してるカードといったあたりだと思います.


今回のオススメ

Windows95/98/98SE/ME の場合 (VxD ドライバ)

今回もオススメ一位は YMF754/744 です. DirectSound や 3D Sound の CPU 負荷が高いという欠点はありますが, CPU パワーも上ってますし,ギャルゲーではさほど問題にならないと思います. 音質,デジタル入出力の対応,MIDI の品質を考えると, コストパフォーマンスに優れたチップと言えます. カードベンダは Labway と Hoontech がおすすめです.

ただし,光デジタル出力に相性問題がある, デジタル入力の著作権保護機構にバグがある等, デジタル入出力を使う人が注意すべき問題点も持っています.

Windows98SE/ME の場合 (WDM ドライバ)

CD-DA のとこで書いたように,薄型 CD-ROM ドライブを使っている場合には WDM ドライバを使う必要が出てくる場合があります. この場合 YMF744/754 はあまりオススメできません. そうなると MIDI が弱点になるわけですが, これはソフトシンセで解決するのが良いと思います. サウンドデバイス自体は音質にこだわらないのであればオンボードそのままでも構わないと思いますし, 気になるのであればデジタル入出力を持った CMI8738 やデジタル出力を持った Xwave 512 (ESS Allegro, S-YXG50 同梱)を使う手もあります.

Windows2000 の場合 (WDM ドライバ)

こちらは私が Windows2000 でゲームをやってないのでノーコメントとします. お金が出せるのであれば Turtle Beach の Santa Cruz あたりを買うと幸せなのかもしれませんが…. あとデジタル出力を使うのなら Xwave 512 (ESS Allegro) がコストパフォーマンス良さげですが, Windows2000 では試してないので何とも言えません.

2 枚挿しという解決法

見ての通り,どのサウンドカードも一長一短で,ギャルゲーのみに限るならともかく, 他の使用用途が絡むとなかなかこれという一枚が無いのが現状です. こういう場合は思い切って 2 枚挿しをするのも手です. 例えば YMF744 と CMI8738 は長短が大体裏表なので, 2 枚挿しすると互いの欠点がかなりカバーされます. ただ,インストールは多少の知識を必要とするので, 誰にでも勧められる方法ではありませんが….


あぁ,今回もまた色々つっこまれそうな気がする(汗  それに USB オーディオデバイスについて全然書いてないな. 自分で使ってるというのに(苦笑  一言だけ触れると, USB オーディオデバイスだとコケたり音切れしたりするゲームが一部あるので, PCI サウンドカードを補機に持って置いた方が無難です(笑


次回の苺電波コラムはごうです。


baru@denpa.org