…僕の妄想がはじまる…
今日はあさから、強い雨と、激しい風がふいている。そう、台風だ。こんな日には、電波の流れは無茶苦茶になってしまう。雨粒にすいこまれた電波は、あれくるう風にさらわれ、世界の中を上へ、下へ、こちらへ、あちらへ、ちりぢり、ばらばらにされてしまう。
「瑠璃子さん…今日は、なにしてるのかな…」
僕は、瑠璃子さんの電波を感じようと、心と思いをこめて、アンテナを開く。でも、電波は、とどかない。僕の電波も、風の力で砕かれてしまう。
「瑠璃子さん…」
今日はだめなのかな…とそのとき、瑠璃子さんの暖かい電波を感じた。
「!!!!」
感じる。瑠璃子さんだ。あわてて窓をあけると、びしょびしょになった瑠璃子さんが、ぽつんと表に立っていた。あわてて玄関をとびだす。
「瑠璃子さん!!!いったいどうしたの?こんな日に」
「ごうちゃんに会いたかったんだ。ここまできたら電波とどくかなって思って…」
僕は、冷えきった瑠璃子さんの細い体を、ぎゅっとだきしめた…
瑠璃子さんの体は冷え切ってしまってる。このままでは風邪をひいてしまう。
「瑠璃子さん、中にはいろう。風邪ひいちゃうよ」
「…うん」
瑠璃子さんをつれて、僕の家にはいる。
「えーと、すぐお風呂わかすから。着替えはと、えーとどうしよう」
「くすくす」
「?」
「ごうちゃんもいっしょにはいる?」
「!!! えっ、あのっ、そのっ、えーとぉ、それはぁ」
「くすくすくす。冗談だよ」
「(汗)」
…いま、このくもりガラスのむこうで、瑠璃子さんがシャワーをあびている…
さーさーさーさー、瑠璃子さんはシャワーをあびている。
ごーんごーんごん、乾燥機が鈍いおとをたててまわっている。
まだ乾くまでには時間がかかるだろう。さて、それまでの間、服をどうしよう…上着はいいとして、下着をどうしよう…。僕のをはくってのもなんだしぃ…うむぅ、やはりつけない? …いかん想像してしまった。シャワーの音がとまった。
くすくすくす
くもりガラスの向こうから、笑い声がきこえる。しまった、おもわず電波を発してしまったらしい (汗)
ぴちゃん…
いま、瑠璃子さんは、ゆぶねにつかっている…って、脱衣所にずっといるのもただの変態だな (^^;;
「瑠璃子さーん、ここに着替えおいとくよー。僕の服だからちょっと大きいかもしれないけど」
ふう。とりあえず部屋にもどって、ぼくも服を着替える。
……うーん遅いなぁ、瑠璃子さん、どうしたんだろう。
ちりちり (おーい、るりこさーん…)
返事がない…あれ? ここは、
- えーい、お風呂だってかまうものか、急いで様子をみにいくぞ
- いやいや、もうすこしまってみよう
なんて迷ってる場合ではない。瑠璃子さーん…だだだだ、(がらがら)
「ふぅぅぅ〜」
あうぅ、のぼせちゃってるよぉぉ。
とりあえず湯ぶねからだきあげて、バスタオルでからだをつつむ。おたがいをすみからすみまで知り合った仲とはいえ、やっぱり照れてしまう (*^^*)。それに、あれ以来、手をつないだり、抱きあってたがいの電波を確認するぐらいで、とくにこれといってしたわけではないしぃ…はっなにを考えてるんだ僕は (^^;
抱き抱えて居間にいく。瑠璃子さんって軽いなあ。あ、いい匂いがするんだ…。ひざ枕にして、うちわでぱたぱたあおぐ。
「んっ…」
あ、きがついた。
「るーりーこさん。だいじょうぶ?」
「あ、ごうちゃん。くすくす。前と逆だね」
「ああよかった。心配したよ」
「ごうちゃんの電波を感じてたら、ついうとうとしちゃったんだ。ごめんね…」
雨の屋上に,瑠璃子さんの色が見える…
外はどしゃぶりだ。風も激しさをましている。
瑠璃子さんはおおきめの僕のワイシャツを着て (男のろまんやな)、ぼくの隣にちょこんとすわっている。瑠璃子さんがよりかかってきた。さらさらの、細い、髪が、ぼくのほおにふれる。どきどきどき。
「…雨、やまないね。電波が聞こえてこない…」
「うん、でも、ごうちゃんが近くにいるから。ごうちゃんの電波だけでいいんだ」
「瑠璃子さん…」
二人の視線がからみあう。瑠璃子さんの瞳。月夜の湖のような瞳。そこには今、確かにぼくだけがうつっている。二人の顔が近付いていく。
そして……
瑠璃子さんの瞳が静かに閉じる
二人の唇が静かにふれる
とくん ・ とくん ・ とくん ・ とくん
ちりちり、ちりちり、ちりちり、ちりちり
ふれあう二人のからだ、ふれあうふたりのココロ
ほっそりとした瑠璃子さんのからだをしっかりと抱きしめる…
すまん、これ以上の描写はとりあえずわたしの筆では技量がおよばん。よって読者諸氏の想像におまかせすることにする。ね、瑠璃子さん。
「くすくす。あんなことや、こんなことをしたんだよねー」
えっ (*^^*;;;