今日は良い天気だなぁ。電波がよく届く。町をぶらぶら歩く。ほんとは瑠璃子さんとデートにでもいこうかと思ってたんだけど、今日はお兄さんにつきあって太田さんのお見舞にいくそうなのでしょうがない。
注: 私の世界では太田さんは無事回復の方向にむかってる〜 ということにしておこう
さて、親にたのまれてる買いものでもしてから帰ろうか…そうだな、るりるり(log 12参照)にもたまには上等なものを買っていってやろう。おかげさまで、るりるりは毎日元気に走りまわってる。ちなみに僕の背中の上で寝るのが好きらしい。もみもみでまくらをくしゃくしゃにするのも好きだ。…うむぅ、買うものたくさんあるなぁ、これと、これと…そうそう、よし、奮発してカルカン最上級だ。もんぷちもすてがたいが、やっぱまっしぐらだな。商店街一帯がセールをしてて、福引の券をもらった。ふむ5枚で1回か。13枚。ちょっと半端だな。
…ここは福引の会場。ふっ、こうみえても僕はかつては福引のごうちゃんとよばれて…ないない。
1回目…白玉、ティッシュだ。
ええい、2回目…またティッシュ (T_T)
くそぉ…
「くすくすくす」
はっ
「ごーうちゃん♪」
「る、瑠璃子さん」
「残念だったねぇ」
「帰る途中?」
「うん。お兄ちゃんはまだいるって。福引かぁ。私もさっき買いものしたんだけど券が2枚しかないんだ」
「あ、ちょうどいいや。ここにあと3枚…」
…というわけで、一緒に福引器を回す…
ごろごろごろごろ……ころん。赤色の玉。からんからんからーん♪
「おめでとーーーー、大当たり温泉旅行〜豪華旅館「鶴来屋」にペアでご招待〜」
・・・
ぶろろろろろろろ〜バスの旅♪〜
というわけで、瑠璃子さんと二人で温泉旅行だ。しかし月島さんがよくゆるしてくれたよなぁ…
「ねえ、瑠璃子さん」
「なあに?」
「あの…おにーさん、なにか言ってなかった?」
「くすくす。だいじょうぶだよ。知合いの子に協力してもらって、その子のところにいってることになってるから」
「そ、そう…」
ふっ、さすがだ瑠璃子さん
月島さんは、ふつーの人になったとはいえ、強度のシ○コンであることに変わりはない。いちおーおつき合いは承認されてるが、二人きりで旅行なんていったら…。…しかしなんだな、このツアー、年配の方ばかりだなぁ。若者は僕たちだけのようだ。
「おにーさんたちは、新婚旅行かね」
横の席の初老の夫婦が話しかけてきた。
「えっ、あの、いや、僕たちはまだそんな…」
「くすくす」
ぎゅっ。瑠璃子さんがくっついてくる。
「似たようなものだよねぇ、ごうちゃん」
はう (*^^*)
…とまあなごやかに旅はつづいた。カラオケモードはやっぱ演歌とかがメインだ。ちなみに僕は得意の「民謡メドレーすーぱーあれんじ」でご老人がたみんなのハートをがっちりキャッチすることに成功した。あ゛瑠璃子さん笑いこらえてる。
注: 現実世界の私はそういうカラオケが存在するというのは聞いたことないし。歌えません。はい。あ、こきりこ節とたんちゃめ節なら歌えるかも (爆)
……到着
おおっ、けっこう田舎のだからしなびた旅館かと思ったらどうしてどうして。むちゃくちゃ立派だ。出迎えたオーナーさんは若くてかなり美人だ。いいなぁ。
「ごうちゃん、良いことでもあったの? 顔にやけてるよ」
はぅン
「ようこそ鶴来屋にいらっしゃいました。当旅館のオーナーの千鶴と申します。ぜひゆっくりしていってくださいね」
ほー若いのに立派だなぁ。綺麗な人だし。ちょっとみとれてしまうかも。ぎゅ、瑠璃子さんがそでをひっぱる、あ゛、ちょっと上目使い。
じーーー
げ、電波もでてるかも。
ちりちり
あうあう (^^;;
案内された部屋でひといきつく。景品の旅行にしては立派なへやだな。お、銘菓「鬼まんじゅう」か。お茶のセットもあるな。
「瑠璃子さん、とりあえずお茶でものもうか」
「くすくす。そうだね」
こぽこぽこぽ。ずずずー。なごなご〜
今回のツアーは、「温泉でのんびり〜」がテーマだそうで、行動は宴会とかを除いて自由になっている。さて、とりあえずどうしよう
- やっぱいきなり温泉だよな。混浴あるかな〜。ね、る・り・こ・さん♪
- とりあえずこのでっかい旅館の中を探索〜さっきのおねーさんとあえるかも
- ちょっと町のほうをぶらっと散策してみよう。まんじゅうについてた解説によると鬼伝説とかあるそうだ
…1はすてがたいが、せっかくの旅行なんだし、外をぐるっと回ってみよう。田舎な風景を見て回るというのも悪くない。
「瑠璃子さん、ちょっと町を散歩でもしようか」
「うん」
というわけで、でかける…のだが、旅館立派すぎ。迷子状態〜。ま、うろうろしてたらいつか出れるだろう…と、廊下のかどで、いそぎ足であるいてきたおかっぱ頭の女の子とぶつかってしまった。
「きゃっ」
女の子ははじきとばされて、すてんとしりもちをついてしまった。
「あわわ、ごめんなさい。だいじょうぶですか?」
手をのばす。
「…あ、すみません…」
もの静かな雰囲気の子だ。なかなか可愛いぞ (このあたり浮気部)。
「くすくす。ごうちゃん、もっと注意してあるかなくちゃ」
いや、あの瑠璃子さんみたく、あくちぶソナー標準実行もーど(log 11参照)ぢゃないから…
「なにかいった? ごうちゃん」
「え、いや、なにも…」
「…ごめんなさい、私も不注意でした…」
「いやいや、そんな…」
とその時、突然背後から声がした。
「あら、楓じゃない。どうしたの。こっちにくるなんてめずらしいわね」
「千鶴姉さん…」
あ、オーナーの千鶴さん。
「…ちょっと姉さんに話が…」
そうか〜、姉妹だったんだ。うみゅ、絵になる美人姉妹だな。
「あら、どうしたの?」
「ちょっとここでは…」
「じゃ私の部屋のほうに…」
ふむ
「…それでは失礼します…」
楓ちゃん(可愛い子は名前もおぼえやすい)が僕たちに軽く会釈をする。二人が去ろうとする。あ、そうだ…
「あ、すみませ〜ん」
「はい?」
「あの、出口どっちでしょう (^^;;」
「……」
…ふむ、さっきの曲り角を一つ間違えたのが敗因か…あれ? 瑠璃子さんなんか様子が…
「…瑠璃子さん、どうかした?」
「…ごうちゃんの好みってあんな子なのかなぁと思って…」
を。微笑んで瑠璃子さんの髪をなでる。じっと瑠璃子さんの瞳をのぞきこむ。ゆらめく炎をつつむ、陽炎のような瞳。ふいに軽い口づけ。
「あっ…」
…ふふふぅ、照れてる照れてるかわういぞ
・・・
瑠璃子さんと二人で町をあるいた。
「瑠璃子とごうの歩く会」
- 会則 1: のんびり歩く
- 会則 2: 仲良く歩く
うむ、なかなか趣のある町だ。それなりに開けた商店街をぬけると、田舎の風景がすっと広がっている。さっきから瑠璃子さんはなぜかかなりご機嫌。僕の右手にくっついてる。
「くすくす。このあたりはよく電波がとどくね」
「うん。さえぎるものがないからねぇ」
この際だから、鬼伝説とやらの史跡とかをいろいろたどってみることにした。ちなみに僕の一族の某ご先祖さまは、鬼退治で有名だ。でもだましうちにしたらしい (汗)
いろいろ回ってみたけど、この町の鬼伝説はかなり変わってる。ふつう特殊技能者の集団とか、盗賊団ってのが相場だが、ここのは「人を狩る超越者」だ。特に、あるお寺で聞いた話はなかなかおもしろかった。鬼の子孫か…超越した力をもつものたち。日常のなかにうずもれたものたち、その血が目覚める時、彼らの目にうつる世界は、まもるべきものなのか? それとも…
「ごーうちゃん?」
はっ
「どうかしたの?」
きょとんとした瑠璃子さん。いけない、いけない。ひさびさにダークな妄想モードだ。ふみゅ。この家の妙な雰囲気がそんな気にさせたのかな? とても立派な家の横を僕たちはあるいている。と、その家の小さな通用門から、可愛い女の子がでてきた。小学生…ではないか。なんだか嬉しそうににこにこ笑ってる。…どこかで会ったような気がするなぁ。あ、さっきの姉妹と似てるような気がする。この町は美人が多いのかな? と、道の反対側からだれかあるいてきた。これまた可愛い女の子だ。胸がでかい (爆) あ、瑠璃子さん、状況説明っす。他意はないよ。うんうん
「あれ、初音、どこいくの?」
「あ、梓おねーちゃん。うん、耕一おにーちゃんが来るっていうから駅まで迎えにいくの♪」
「耕一が!? なんでまた…あ、楓は?」
「いまちょっと千鶴おねーちゃんのところにいってるよ」
をや? 横を通りすぎながらつい話を聞いてしまったが(ぢごくみみ)、もしかしてみんな姉妹? ふみゅ、美人4姉妹か…その耕一とやらは「来る」ってことは親戚かな? うらやましいかも。
…さて、旅館のほうに帰ってきた。けっこう歩いたのでつかれたな〜 宴会まではまだちょっと時間があるみたいだな。
「そうだね…ちょっと温泉にでもはいろうか、瑠璃子さん」
「くすくす。やっぱり混浴?」
「えっ。いやぁその、そりゃぁ」
「でもこの時間だと人いっぱいいるかもね…」
む、それは困る。僕の瑠璃子さんを他のやつらが見るなんて…
「また夜中人がいないときに…ねっごうちゃん♪」
ふみゅ (^^;
旅館のかげで、千鶴さんがだれかと話してるのをみかけた。おや?
「ふふふ、としちゃんたら。あいかわらずおもしろいですぅ」
「いやぁ。あ、ではそろそろ。こんどまた手料理たべさせて下さいね〜(キラリ)」
「はい ^^」
ふみゅ。だれだろ。まあいいや。とりあえず部屋にもどる。さあやっと温泉だぁ。
「じゃあ、いこうか」
着替えの浴衣をもって席をたつ。
「うん。くすくす」
# 特別ゲスト としちゃん(kubochan) (笑)
・・・
おおおおおっ! ここの浴場はすごいぞっ! 広いし、綺麗だし、お風呂の種類も多い。これで瑠璃子さんが隣にいたら完璧なのに…。大浴場に加えて、あわぶろ、みずぶろ、薬草ぶろ、etc…え、電波ぶろ? あ、電気ぶろか…。ふむ、泉質はと…何種類かあるのか。今日はいろいろ歩きまわってつかれたから、疲労回復に効果のある弱アルカリの単純温泉だな。うんうん。人いないのね。きょろきょろ。おもわずおよいじゃったりして。ちゃぷちゃぷ…あ、露天ぶろもあるんだ。いってみよ。おーなかなか凝った作りだな。山奥ってかんじ。…あれ? これって女湯のほうとおもいっきりつながってるような…湯煙のなかに浮かぶあの人影は…
「!! だれ?」
…瑠璃子さんだ〜☆
「おっと、いけない。おどろかせちゃったね〜」
「あ、ごうちゃん♪」
「…もちょっとそっちいってもいいかなぁ」
「くすくす。いいよ」
微笑む瑠璃子さん。瑠璃子さんの肌はほんのり赤くそまっている。濡れた髪がつややかに光る。心の中をうつしとおす鏡のような瞳。湯ぶねの中でよりそう二人…東の空の満月はただ僕たちを静かにてらしていた。
・・・
ふぅいいお湯だったなぁ。
「ごうちゃん、おまたせ」
瑠璃子さんも出てきた。
「くすくす。いいおゆだったね〜」
二人ならんで部屋のほうにもどる。う〜〜ん浴衣の瑠璃子さんもやっぱいいなぁ。ちょっと浴衣のたけがみじかいかな。それはそれで色っぽいの〜
さてさて、このあとは一応このツアー唯一の団体行動の宴会だ。すっぽかして瑠璃子さんと二人すごすというのも一瞬考えたが、バスの中で仲よくなったみなさんとの交流も悪くない。…ふっ、こんどは「民謡メドレーすぺしゃる「東北、北海道編」」でふたたびみなさんのハートをキャチ。あ、おひねりはいらないっすよぉ (笑)。さて、席にもどろう。
「くすくすくすくすくすくすくす」
みょ? いつもより余分にわらっております。
「ごうちゃ〜ん」
なんか目がとろーんとしてるし、顔が赤いぞ…
「いやぁおじょーちゃんいいのみっぷりだねぇ」
っておじさんおい。
「ごうちゃん…」
ぎゅっすりすり
瑠璃子さんってあまえじょうごなのか? (^^;; …うむ。ないすかも。
「くすくす。ごうちゃん。大好きだよ…」
ごろごろ
ふむ、最近妄想度が高いな。我ながら。
宴会もそろそろおひらき。まだ夜は長いけど、ご老人がたは夜が早いから (汗
さて、とりあえず部屋のほうにもどろうか。
「るーりこさん。おーきーて」
「うーん、ごうちゃぁん。むにゃむにゃ。あん」
はぅン(^^;;; うみゅ、このままっ、、、ってわけにもいかないか。ゆさゆさ。
「ううん……」
ほわわー
「あれぇ、ごうちゃん」
起きたようだ。
「くすくす」
「ん? どうしたの?」
「ごうちゃんの夢みてたんだけど…」
「へーどんな夢?」
「…….くすくすくす……ないしょ」
を(^^;; 気になる。
温泉にもう一回はいりにいこうか…とか思いながら部屋にかえってくる。お、もう寝るための準備がしてあるのか…布団が…おおうくっついてる。これはやはり…
- 「瑠璃子さん…」彼女の瞳をじっとみつめる。深い森の井戸の底の満月のような瞳。ぼくは彼女の体をそっと布団に横たえる…
- やっぱ温泉つかってこ。
ここはやっぱり、男として、い…
「ごうちゃん、もっかい温泉いこ♪」
…がくぅ (T_T)
この時間ならみんないないだろう。たぶん。というわけで当然、混浴〜(こんなことばっかかいてるから「お風呂すきっすね」っていわれるんだ…)。
さっきもまあ、混浴同然といえばそうなんだけど、今度はきっと誰もいないし…
「くすくすくす」
おろ。僕をみる目がすっと細まる。
「……ごうちゃんのえっち」
あう、電波がもれてた (^^;;
…さて、こっちは混浴の巨大露天ぶろ…って男湯も女湯も混浴も結局ここでつながってるんだな。納得。…ふう。いいお湯だ。僕のとなりには瑠璃子さん。真上からそそぐ月光にうかびあがる、瑠璃子さんの白い肌。僕を見る瞳。闇夜に光る惑星の光のような瞳。…二人の視線が重なり、そして……って、人の気配…けっこうたくさん…あう。ええい僕と瑠璃子さんの邪魔をするのはなにやつぅ。後ろのほうか……ををっ、これはあぁぁぁ。
ぽよん、ばばん、ぺたぺた、ぺたぺた (ごく一部明瞭)
うむうむ。っていてててて、瑠璃子さん耳ひっぱらないで (;_;)
「ねえ、千鶴姉、ほんとに気配感じたの?」
「ええ。間違いないわ。あれは間違いなくエルクゥのものよ。ね、楓」
こくこく
「だから耕一さんに来てもらったの」
「耕一お兄ちゃんも一緒にはいればいいのにね」
…ってなんの話なんだろ。エルクゥ?
「でも、こんなところで油売ってていいのか?」
「だってぇ、気配きえちゃったんだもーん。たまにはいいじゃない。姉妹水入らずで」
「あれ?」
「どうしたの初音?」
「誰かそこにいない? …」
やばっ、ばれる!!
瑠璃子さんがすっとたちあがった…
「あれ、人がいたんだ」
ナイス! 男の僕だとまずい。
「あら、たしか団体のお客の…」
「そうだよ。くすくす」
よし、ごまかせたらしい。
「あ、こちらはえっと…」
「瑠璃子だよ」
「瑠璃子さん、こっちはうちの妹たちです」
自己紹介モードか。
「…瑠璃子さんは、観光でいらしたんですか?」
「うん、福引であたったんだ」
湯けむり美女5人、うむ絵になるのぉ。いきなりうちとけてるぞ。瑠璃子さん。
「へぇ。ここの町はどうかなぁ? おねーちゃん」
「くすくす。いいところだねぇ。電波がとても遠くまでとどくんだ」
……を、(^^;;;; みんな不思議そうな顔。
「電波?」
「そうだよ。私の街だと、高いところにいかないとなかなか電波があつまらないんだけど、ここだと遮るものがあまりないから、町中でもあつまるんだ」
あう (^^;;。謎がふかまっているらしい… とその時、なにかかすかな気配をかんじたような気がした。脳に直接届くこのかんじは…電波? いや、ちがう。気のせいかな? と、千鶴さんたちの様子がおかしい。険しい表情。
「…千鶴姉さん…」
こくり。
「ごめんなさい、瑠璃子さん。わたしたちちょっとこれで失礼します」
そそくさと去っていく。いったい何が? さっきの気配と関係あるのか?
「ごうちゃん…」
こっちを伺うように見る瑠璃子さん。うん、きになる。
「おいかけてみようか…」
とと、上にあがっていったようだ。気配は外のほうからだったような気がするので、着替にでもいったのかな? 僕たちも急いで部屋にもどって着替える。
「瑠璃子さん、着替えおわった?」
ひょい
「あん、ごうちゃん、のぞかないで」
「あう、ごめんごめん」
って…着替えのぞかれるのはやっぱ恥ずかしいのか? …女の子はよくわからん。謎だ。
とりあえず玄関のほうにでてみる。ナイスタイミング。ちょうど4人…いや5人が出ていくところのようだ。よかった。歩きのようだ。後をつける。ソナーがいるから(ぉぃ)距離はある程度とれる。気付かれることはないだろう。…結構あるいたな…。しかしかなり足速いぞ。速度おちないし。ついていくのが大変。距離もかなりあいてしまった。瑠璃子さんも苦しそうだ。
「だいじょうぶ? 瑠璃子さん」
「はぁ、はぁ。うん、だいじょぶだよ…」
まいったな。このままだとはなされてしまう…
「あ…」
「どうしたの?」
「止まったみたい」
なんとか追い付いた。ここは山のなか。ちょっと開けた場所。5人は何か様子をうかがっているようだ…。そのとき、その視線の先から気配を感じた。電波ではない…がなんとなく感じる。なにか、こう、威圧されるような雰囲気だ。本能的になんとなく恐怖のようなものをかんじる…。と、そのとき、すさまじい「気」が僕らを襲った。すごい。これは…さっきと同じようだが、その力の桁がちがう。額から脂汗がながれる。心臓をつかまれるかのようだ。これはいったい……恐怖? そう。そのすさまじい「気」にたいして僕たちは恐怖を感じている。ライオンかなにか、猛獣ににらまれたらこんな感じなのではないだろうか? その気配の源はいったい? 青白い月の光が「それ」を照らしている。氷のような冷たい目。ほとばしる冷気。神々しいまでの威圧感。そこには4人の美しい鬼がいた。
瑠璃子さんがぼくにしがみついてくる。
「…ごうちゃん…」
肩がふるえている。そう。それほどこの空間に満ちている「殺気」はすさまじい。その4人の中に一人の男。彼が「耕一さん」なのだろうか? 平然とした顔で立っている…いったい。しかし、これはすごいことになってしまった。
- うーむ、ちょっと遠いな。もう少し近づこう。
- さっさと逃げ帰ろう。なーに、僕たちには関係ないことだろうと思う。うん。
…まあ、1だよな…
「だいじょうぶ? 瑠璃子さん。ここにいてもいいんだけど…」
「ううん。だいじょうぶだよ…」
おそらく常人なら立っているのでやっとだろう…が、僕たちの場合、ある程度自分の「恐怖」そのものを制御できてしまう。恐怖を感じている本能をカットしてしまえばいいのだ。と、彼女らの視線の先から何者かがあらわれた。ゆらり。千鶴さんの顔に軽い動揺の色がうかぶ。
「としちゃん!?」 (注:特別ゲストkubochan再登場)
「ヒサシブリダナ、ウラギリモノドモ、ソシテ、ジロエモンヨ…」
「!!」
「カツテナンジラノウラギリニヨリ、ワレラハニクタイヲウシナッタ。イマコソフクシュウノトキハキタレリ」
「その体は…」
「コノモノニ、ワレラえるくぅノチガワズカナガラナガレテイル。ソレヲヨリシロトシテ、ワレラハヨミガエッタノダ」
「千鶴姉…」
「わかっているわ。…私にいかせて…」
悲しい瞳。
「としちゃん、私の心を癒してくれた、あなた…でも、私は……あなたを…殺します…」
千鶴さんの殺気が膨れ上がる、そして…
千鶴さんが跳ねる。その爪が「としちゃん」の体を貫こうとしたその瞬間…突然「としちゃん」の体がふくれあがった…ように見えただけだ。その体から、突然「闇」が吹き出してくる。
「なっ」
闇は千鶴さんの体をつつみこむ…闇が急速に姿を消した…
「ククククククク…ヤハリチノコサガチガウナ。チカラガミチテイル…」
千鶴さんの口から低い声が響く。と、千鶴さんが再び跳ねる。今度は4人のほうにむかって…そして、全員を闇がつつんだ。闇の中から、二つの影が飛び出した。
「サスガダナ、ジロエモン、えでぃふぇる。ワレラスベテノチカラニモクッサヌトハ…」
闇のひいたあとに立つのは、3人の美しき獣(+おまけ1)…が、3人ともさきほどの神々しさは感じられない。禍々しい邪気がうずまいている。
「ダガ、ワレワレニカツコトハカナウマイ…オマエタチニ、コノモノタチヲキズツケルルコトガ、ハタシテカノウカナ…クククク」
闇にとらわれた3人の殺気が膨れ上がる…
「……耕一さん」
「ああ、わかってる」
突然耕一さんの体に変化がおこる!!! (変身シーンは略。変身中は攻撃不可よ)
グオオォォォォーー
雄叫びがやまあいに響きわたる。空間がびりびりとふるえる。
「カンゼンニカクセイシテイルノカ…サスガダナ、ジロエモン、3タイ2トハイエ……ソコニニンゲンガイルナ…」
を、のぞき、ばれてるよ (汗
闇が僕たちにせまってくる。
「ワレラノチカラヲハッキスルコトハデキナクトモ、タテグライニハツカエヨウ」
ふーんそういうつもりか。たぶん無駄だよ。くすくす (おっと笑いがうつった)。僕は全く恐怖を感じていない。そう、体全体を僕自身の電波の制御下においてある。全ての感情と肉体は理性のもとに統制されている。最近これができることに気が付いたのだが、瑠璃子さんにはできないそうだ。自分自身の制御はフィードバックの調整がむずかしく、他人を操ることより難しいそうだ。かわりに瑠璃子さんは電波の受信の精度が格段に良い。電波能力にも個人差があるのだろう。
闇が僕たちをとらえようとする。電波のチカラを解き放つ。電波はつむじ風のように僕たちの体の回りをなぎはらう。闇がきりさかれる。「闇」は電波とは違うようだ。何らかの思念集合体。しかも肉体をもたないにもかかわらず「脳の構造」を感じる。電波で操れそうだな…(かなりご都合はいってるっすね)
「瑠璃子さん!!」
「うん」
瑠璃子さんをだきよせる。彼女からの暖かい電波が流れ込んでくる。瑠璃子さんは僕のアンテナ。瑠璃子さんは僕のチカラの源。璃子さんは僕のココロのささえ。瑠璃子さんは僕のために存在し、そして、僕は瑠璃子さんのために存在する。
ちりっちりちり、ぢり、ぢり、ぢっぢぢぢっぢぢぢぢ
電波が僕の体のまわりにつぎつぎとあつまってくる。全ての電波は、僕の意思のもとに統一され、渦をまき、紫電をはなつ。そう。全ては破壊のために。「闇」は人間じゃない。…エルクゥ、人を狩る者。彼らの中は狩猟の願望にみちている。肉体への欲求。人を狩ることができる術への欲求。たとえ瑠璃子さんのチカラをもってしてもかれらを「癒す」ことは不可能だ。彼らにとってはそれこそが自然な状態なのだから。僕たちには闘うしか術がない。闇がふたたび僕たちに襲いかかる。だから無駄だよ。電波にからめとられた闇は、その意思そのものを制御され、自らの存在意義を失い、そして消滅していく。
「ソ、ソンナバカナ」
千鶴さんの口からの声。
「ナ、ナニモノナノダ」
「くすくす」
瑠璃子さん。
「ごうちゃんと瑠璃子だよ。知らない?」
って知らないって (^^;;;;;
楓ちゃんのほうも(耕一氏(現在エルクゥ化)は表情不明)驚愕の目でこちらをみてる。
「ワ、ワレラヲホロボスちからガソンザイスルトイウノカ……クッ」
と、とつぜん、初音ちゃんが地をけって跳ねた!!! おしよせる殺気。右手の爪が月光に光る。
「シネッッッッッッッ」
すさまじい勢いで僕たちにせまる美しい獣。月光の軌跡が僕たちをなぎはらう。が、殺戮の凶器はむなしく空をきるだけだった。
「ナニッ!!!」
瑠璃子さんを抱えたままでの常人ばなれした跳躍。
「キサマ、ニンゲンか?!」
失礼な (^^;、ちゃんと人間だよ。ちょっと普通じゃないのはみとめるけどね。どうということはない。リミッタを全部はずしてるだけのこと。肉体はその全ての力を発揮し、運動能力は常人の数倍以上に膨れ上がっている。このあとたぶん足腰たたなくなるだろーなー。肉離れは必至。骨もどうにかなるかも。とかのんきに考えながら、電波を集める。
ちち、ぢぢぢぢ、ちりっちりちり
と、再び初音ちゃん(鬼つき状態)の爪が迫る。
ぐざしゅっ…
ふう危ない。ちょっと左肩をかすめた。あ、ちょっとどころじゃないかも。下手するとあっさりやられてしまう。予想よりはるかに強いぞ。よし、後ろをとった。電波の力を解放する。
ちりちりちりちりちりちりちりちりぢりぢりぢりぢりぢりぢり
「グォォオォォォォォォォ」
この世のものともつかない悲鳴があがる。電波が流れ込んでいく。初音ちゃんを傷付けないように、慎重に電波を操る。彼女のココロと同調する。ここは夢のつむぎだされるところ。あふれでる奔流。それはとても遠い記憶。ワカレ、デアイ、ウラギリ…それを責める「闇」…心を縛る縄となり、彼女を苦しめている。過去のしがらみなどなんになろう。大切なのは今を生きること。そうだよね、瑠璃子さん。おまえたちにも、彼女らとおなじく、新しい未来があることだろう。今は全てを忘れておやすみ…
闇は消失した。電波の余韻が空間に響いている。あと二人(+おまけ1)だな…
ふらっ、おっとっと。倒れる初音ちゃんをささえる。気絶しちゃったかな? あれ? 血? なんだ、僕の左肩のか。服よごしちゃったよ。一陣の風が僕たちの横をぬける。やばっ、連続攻撃か!! まにあわな…ふぅ、楓ちゃんと耕一さん(エルクゥ状態)だ。どうやら僕を敵ではないとみてくれたみたいだな。
「初音!!!」
「くすくす、大丈夫。眠ってるだけだよ」
「…あなたたちはいったい…」
「そんなことはあとあと。のこり2人… (だからおまけ+1いるって)」
「どっちかひきよせといてくれません?」
と耕一さんに話かけてみる…うみゅ、表情がよくわからん (^^;; 鬼だし。
「ワカッタ」
とと、さすがに迫力あるなぁ。
「クッ、ココハヒトマズ…」
げ、逃げられると面倒なことに…と、耕一さんが駆ける…速い。もし敵にまわってたら速攻でかたついてたな (^^;;
「…瑠璃子さんは、ここにいて…」
「えっ、でも」
「大丈夫だよ」
そっとくちづけ。
「あっ…」
「楓ちゃん、瑠璃子さんをよろしくねぇ」
駆けながら力をめいいっぱい解放する。電気の粒がつぎつぎと僕の周りにあつまってくる。耕一さんと二人(+1)はにらみあっている。降着状態。そこに僕がわってはいる。と、突然梓さん(鬼つき)が僕に攻撃をしかけてきた。げ、速い。かろうじてかわす。集中がゆるみ、電波が拡散してしまう。くっ、まずいぞ。全身の筋肉の力を解放する。力は体をめぐり、一点へとはしる。全ての力を右腕にこめて打ち出す。梓さんの体がはるか後方にふきとばされる。ふっ、「拳児」のみようみまねだが、それなりにうまくいったぞ。って力の調整きかなかったけど大丈夫…だよな? たぶん。よし、電波を集めなくちゃ…突然強い電波の流れ。瑠璃子さんからの送信? 中継機能も標準装備か、…さすがだ(ぉ
梓さんが立ち上がる。…全然平気みたい。ちなみに僕の右腕はあがらない。完璧に折れてるな。こりゃ。梓さんが跳ねる。さっきよりもさらに速い。を、千鶴さんもこっちへの攻撃を優先か? 二人がせまる。動体視力全開。体、もってくれよ。二人の攻撃を紙一重でかわ…せてないよ。足と背中に…でも。これで最後だ。電波の力を解放する。強力な電波が二人に雪崩のように流れ込む…
中略 (ぉい)
…闇は消滅した。
ふう。なんとか、終わったようだな。
「クソッ、アノチカラハイッタイ…」
げ、しまったぁ。+1のことをすっかり忘れてたぞ。あ、逃げる気か? おいかけなきゃ…駆け出そうとする。が、その場にしゃがみこんでしまう。足が全然うごかない。あれ? ダメだ逃げられてしまう。と、彼の前に影が舞い降りる。
黒いおかっぱ頭の少女。一見はかなげなその姿。だが彼女の瞳にあふれるのは強い意志の力。高貴なる狩猟者の血をうけつぐもの。エディフェル。そう、それが彼女のかつての名。そして、彼女に抱えられてその横に降り立ったのは……風になびく細くしなやかな髪。月夜に光るその白き肌。深い深い、海の底のような瞳。その憂いに満ちた瞳は何をみてるの? ボクノ、ぼくの、瑠璃子さん。彼女の手が空を走る。電波の力が解放され、最後の闇をつつみこむ。オ・ヤ・ス・ミ… ささやく声がきこえたような気がした。
さあ、こんどこそ、本当の終りだ。あ、瑠璃子さん、が、こっちに、小走りでかけてくる。なんか泣きだしそうな顔だよ。どうしたの? 笑顔で手を振ろうとする。が、手が、あがら、ない。あれ? なんか、周りが、暗いや。月が、雲で、かくれたかな? 「…ちゃん」「…うちゃん!」瑠璃子さん、どこ? よく、聞こえ、ないよ。見え、ないよ。ねぇ、ど、こ、に、い、る…そして闇がぼくをつつんだ。
暗い暗い暗い闇の世界。
ここは…ドコ…なんだろう。
身体中の感覚はほとんどない。指の先のほうまでほんとうに存在しているんだろうか?
そういえばボクはだれなんだ? なにか大事なことをやりとげて、そして、そして…それからどうなったんだろ? まあ…いいや。どうでも。なんだか眠いや。ここはあたたかいな。ねむるのにはちょうど…いい…か…も…
闇の腕にいだかれ眠りへと落ちていく…と、そのとき、
「……ゃん」
…あれ?
「……ちゃん」
だれだろう? こんなところに。
「どこにいるの、ねえ、こたえてよ (;_;)」
…泣いている。だれだろう、思い…出せない。でも、でも、このこが泣いてるのをみると、なんだか、なんだか…ねえ、どうして、泣いてるの。なにが、悲しいの、だれを、探してるの、だれが、君を泣かせたの? 泣かないで、ナカナイデ、キミの涙をみると、ボクは、ボクは、ボクは…
「ねぇ、ごうちゃん、返事、してよ。ひっく。わたしの電波、届かないの? ひっく」
? !!!!!!!!! そうだ、ボクハぼくは僕は、そう、僕の名は…
「ひっく、ぐすっ、ひっく…」
ぺたんとすわりこんでしまう、ルリコさん…瑠璃子さん、瑠璃子さん。
なかないで、僕は、僕はここにいるよ。
瑠璃子さんの電波を感じたい。瑠璃子さんと話したい。瑠璃子さんといっしょにいたい。瑠璃子さんにふれたい。瑠璃子さんを抱きしめたい。瑠璃子さん、瑠璃子さん!!
感覚がもどってくる。体中に激痛が走る。瑠璃子さん! ぼくは、ぼくはここだよ。
「ごうちゃん?! どこなの? あっ」
瑠璃子さんを背中からだきしめる。瑠璃子さんの温かさを感じる。離さない。絶対。
…世界に光がみちていく。
(…心拍、血圧、上昇してます。脳波も覚醒レベルに…奇蹟だ…、あっ君、ここは集中治療室だ、だめ…)
ん、さわがしいなぁ。
「ごうちゃん!!」
あ、瑠璃子さん。おはよ。瞳からあふれでる雫。笑ってよ、ね、瑠璃子さん。
「うん (^^)」
・・・
「はい、ごうちゃん、あーーんして」
「あーーん」
もぐもぐもぐもぐ。
「うーんおいしい♪」
「くすくす」
とある病院でのよくある? 風景。ほんとのとこいうとあんまおいしくないんだけど、瑠璃子さんに食べさせてもらえるなんて、ぼかぁしあわせだなぁ。ちなみにとなりでもにたような展開だ。こっちは病院食じゃないけど。
「次は茸料理なんですぅ」
「はははは。やっぱ千鶴さんの料理は最高だなぁ (きらん☆)」
「まあっ、もうとしちゃんったら♪」
僕も昨日一口いただいたらしいのだが、なぜか、その後の記憶がない。目がさめたときは、身体中計器がついてて、涙を目にためた瑠璃子さんがいた。なにがあったんだろう。
「やあ君もどうだい? おいしいよ」
と瑠璃子さんがわってはいる。
「だめ。ごうちゃんが壊れちゃったらこまるから」
うーみゅ。いったい昨日僕の身になにがおこったのだろう…
僕は全治2ヵ月の重症で入院ということになった。医者はとんでもない回復のペースにおどろいている。まあ1月ぐらいはかかるかな。としちゃんも衰弱してたので入院してたが今日退院だ。ほかのみなさんはぴんぴんしてる (^^;;。費用その他もろもろは、鶴来屋さんのほうが負担することになった。まあ、あたりまえといえばあたりまえか (^^;;。入院ということになって、おにーさんにおもいっきりばればれになってしまったのが、頭がいたいところだ (―;;
さて、今日で自分の町に転院だ。最後温泉にはいれなかったのがちょっと残念だったけど、宿泊券たくさんもらったので、ちょくちょく温泉にこれる。またこんど瑠璃子さんとこよう♪ 今度こそは…
「くすくすくすくす」
を、
「ごうちゃんのすけべ」
あ、また電波もれてた (^^;;。瑠璃子さんのほほに赤みがさす。
「くすくす。またこようね…。今度も二人で…」
瑠璃子さんが僕のギプスからでた指の先をきゅっとにぎる。心地好い電気の粒のながれを感じながらぼくは微笑むのだった。
(おわり)
(特別ゲスト: 悪食の(勝手に設定つけたすまんです)kubochan)