ちゅんちゅん、ちゅん。きらめく朝の光。
「うーーーん」
背伸びする。
今日もいい天気みたい。くすくす。こんな日は電波がよくとどくんだよ。
朝の電波を体にあびる。まどろむ夢とうつつの狭間から飛び出した電波は、とても、とても幻想的な「色」なんだ。
体をおこす。
「ふみゃー」
「おはよ、ごうちゃん」
このこはうちで飼ってる黒ねこの「ごうちゃん」(log 12 参照…)ベットちゃんとつくってあげてるのに、いつももぐりこんでくるんだ。お兄ちゃんがお風呂にいれようとすると暴れるのに、私といっしょだと静かなんだよ。くすくす。名前の主ににたのかもね。
「にゃー」
服を着替えて階段をおりていく。とん、とん、とん。ちょっと前まで、この下はいやな電波でいっぱいだったの。黒い、黒い電波。人の心の深い亀裂のそこから出てくる電波。オモイは曲がり、歪み、小さなトゲでいっぱいになって、他のココロを傷付ける。
ちりちり、ちち、ぢぢぢ
でも、今は違うんだ。
「あ、瑠璃子、おはよう」
「おはよう、お兄ちゃん」
ほら。
二人で食べる朝ごはん。昔と同じ。トーストにベーコンエッグ。今日はお兄ちゃんの当番の日。うーん、ちょっとお塩が多いかな。テレビでは天気予報。全国的に晴れ晴れ。くすくす。
「なあ、瑠璃子」
「なあに」
もぐもぐ。
「あの、彼とはまだお付きあいしてるのかい?」
「ごうちゃんのこと? うん。ごうちゃんは私の一番の友だちだよ」
(でも、ただの友だちじゃないんだよ。)
「そ、そうか。うんいいことだな。はははは。…今日もいっしょに登校かい?」
「そうだよ」
「そ、そうか」
変なお兄ちゃん。
・・・
「いってきまーす」
扉をあけて家をでる。お日様の光を体いっぱいにあびる。きれいだね。うん、今日も感度良好。ちりちり。いつもの待ち合わせの場所。いつもの時間まではまだもうすこしある。たいていわたしのほうがお寝坊さんだから、ごうちゃんのがさきに来てるんだけど、今日はちょっと早起きだったから私のがさき。あ、そうだ♪
影にかくれてごうちゃんをまつ。気付かれないように電波の力はおさえぎみ…
ごうちゃんは私とちがって、人がたくさんいるようなところでは、電波の力をほとんど表にださないの。力がつよいから、そのぶん、気を使ってるみたい。あ、でも、あんなことやこんなことを考えてるときは、もれてくる電波と表情ですぐわかっちゃうんだけどね。くすくす。
力をおさえてるぶん、受信のほうの感度もかなりおちちゃうから、私が力おさえたらなかなかきづかないんだ。でも本気で力をだしたときはすごいんだよ。私がどこにいてもみつけちゃうの。あ、きたきた。いつもどおりの時間だね。いつもの場所でいつものように待ってる。こっそりとうしろからちかづいて…
「おっはよ♪ごうちゃん☆」
とつぜんうしろからだきつく。
「どわわっ、あ、瑠璃子さん!」
「くすくす」
ごうちゃんを感じる。電波のちからじゃないよ。でも、あったかいんだ。
「くすくす。おどろいた?」
「うん (^^;」
「さ、学校いこ」
ふたり並んで学校に行く。いろんな話をする。昨日みたテレビの話、ねこのごうちゃんの話、昨日受信した電波の話…。私の話にうなずいたり、驚いたり、笑ったり。こんなふうに話ができるのはごうちゃんだけなの。
あれ?
「ん、どうかした? 瑠璃子さん」
おかしいな。いまだれかの電波を感じたような気がしたんだけど…
「あ、ううん、なんでもないよ」
気のせいかな…あ、また。
後ろをふりかえる。
「どうしたの?」
「ちょっと待ってて」
ちりちりちりちりちり。 (あ、高速索敵モードだ。だまってよ。byごうちゃん)
電柱の影になにか動くもの。あれはあ。くすくすくす…
「もういいよ、ごうちゃん。さ、早くいこ。遅刻しちゃうよ」
「あ、うん。…わっ」
ごうちゃんの腕に腕をからめてくっついちゃう。ごうちゃんの腕に頭をくっつける。
「る、瑠璃子さん、む…」
「だめ?」
ごうちゃんの目を覗き込む。じーーーーー。私がうつってる。
「あ、いや、駄目ってことはないけどぉ (^^;;」
どんがらがっしゃん、なにかひっくりかえしたような音。くすくすくす。
「いったいなんの音…あ゛月島さん…」
「や、やぁ、おはよう」
「おにーさんもいま登校ですか?」
「いやぁきぐうだね…おにいさん? 私は君におにーさんなどとよばれるような間柄になったおぼえはないぞぉぉぉぉお」
「つ、月島さん…」
「だいたい、君は瑠璃子の良い友達であって、それ以上ではだんじてないぃぃ」
「あ、あの、おちついて…目立ってますよぉ」
「これがおちついていられるかぁ。瑠璃子! さあ、その手をはなしなさい」
「いや」
「!!」
「…ごうちゃんは私のごうちゃんなの。私がくっつくのは私のかってだよ。ねっ (ぎゅぅ)」
「る、るりこさん…」
「き、きさまが瑠璃子をつれていくのかぁぁ」
「いや、あの学校いくだけなんですけど…」
「…おにいちゃん…」 (げ、ちりちりいってる…byごうちゃん)
「いいかげんにしないと…」
「る…るりこ…す、すまない、…瑠璃子はお兄ちゃんとこいつと…」
「こいつじゃないよ、ごうちゃんだよ」
「くぅ、渡邊君とどっちが大事なんだ?」
「そんなのきまってるよ。お兄ちゃんも大事だよ」
「そ、そうか!やっぱり……って「も?」」
「でもごうちゃんはもっと大事なの」
がーーーん…
「さ、がっこいこ♪ほんとに遅れちゃうよ」
「…あの、白くもえつきちゃってるんですけど…」
「大丈夫。ほっといてもすぐ復活するから。くすくす」
「は、はは…」
・・・
「じゃ、またお昼休みに」
「うん。いつもの場所だね。くすくす」
今日もいつもの学校がはじまる…。授業時間。カリカリ、カリカリ、黒板をうつすみんなの鉛筆の音。先生の単調なペースの単調な声。みんな、ただ、ひたすら、ただ、ひたすら、単調な反復作業。
…つまんないなぁ。この授業の間は電波の通りが少し悪いんだ。よどんだ電気の粒にはばまれて、外からの電波が聞こえにくくなるの。外はあんなに晴れてるのに。こんどの席替えは窓際の席になるといいな。…ごうちゃんなにしてるのかなぁ。
「…タスケテ…ボクハ…マダ…キエタクナイヨ…」その声が初めて聞こえたのはもうずいぶん前のこと。もうその声は聞こえない。ごうちゃんと出会ってから、たぶん、わたしは変わったとおもう。ごうちゃんは変わったっていうより、たぶん、もともとのごうちゃんにもどったんだとおもう。私は「あれ」より前の私じゃない。たぶん、もう、あの私にはもどらない。「あれ」からの私でもない。もっとちがった新しい私。
…いまの私、けっこうお気に入りなんだ。毎日楽しいの。くすくす。
きーんこーんかーんこーん
よどんだ電気の粒が動き出す。さ、お昼休みだね♪
・・・
お昼休み。今日も私はいつもの場所にいくの。あ、でもそのまえに、ごはんかってこなくちゃ。今日はお弁当じゃないの。売店にいってパンを買う。そなえつけの電子レンジでチン♪ ちょっと種類がちがうけど、これも電波の力。電波って便利だね。くすくす
いつもの階段をのぼって、いつもの扉をひらく。
ぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎぎ
世界がぱっとひらける。ここは屋上。この学校で一番高いところ。衛星放送のアンテナをたかいところにつけるのとおんなじなの。電波は高いところのほうがよく受信できるんだ。手をそらにかざす。からだいっぱいに電波を感じる。小さな電気の粒が、私の体にすいこまれていく。
ちりっ、ちりちり。あ。あたたかい電波の流れを感じる。この電波は…
「瑠璃子さん。電波、とどいた?」
ごうちゃんだ。
「うん。いつも届いてるよ。くすくす」
わらいながらごうちゃんに近付いていく。
「今日はごうちゃんのが早かったね」
「うん、ちょっと早く授業がおわったんだ」
「じゃ、お昼にしよっか」
「うん」
ごうちゃんの横に座る。
「あ、瑠璃子さん、今日はパンなんだ」
「うん。電波パンなんだよ」
「(^^;; じゃ、たべようか」
「うん、いただきまーす」
もぐもぐ。ふたりならんでお昼ごはん。高い、高い空。青い、青い空。すんだそらのむこうにお日様。すみわたった空気の中を電波が走る。
…あれ? ごうちゃんのごはん…おべんとう? おにぎりと、卵焼きと、ウインナーと、サラダ…だれにつくってもらったんだろう。おかあさん忙しいからつくってくれないとか前言ってたよね。
じーーーーー
「ん? あ、瑠璃子さんどうしたの? あ、たこさんうぃんなーほしい?」
「えっ…」
「ちょっとこげちゃったけど、まあ食べれなくはないよ」
「!! ごうちゃんがつくったの?」
「うん、ちょっといまびんぼーで、お昼買ってる余裕がないんでね。家にあるもののありあわせだよ」
なーんだ。一瞬、だれかごうちゃんにお弁当つくってくれる女の子がいるのかと思っちゃったよ。くすくす。そんなものずきな子ってあまりいないよね。
「はい、あーんして〜♪」
「くすくす。あーん」
ぱくっ。もぐもぐ。
「ちょっとコショウがききすぎてるかな?」
「うん (^^; まあなれないことするとこんなもんかなぁ」
「…ねえ、またお弁当つくってきてあげようか?」
「え、いいの?」
「うん」
「それはうれしぃなぁ。ありがとう」
「くすくす」
お弁当たいむはおしまい。ごちそうさま。
「くすくす。今日はいい天気だね」
「ほんと。朝方は寒かったけど今は風もなくてあったかいし」
ごうちゃんの肩にもたれてると、ごうちゃんの体をとおして、電波が私にながれこんでくる。ごうちゃんの電波。深緑の奥底からわきおこるような電波。暗き闇をいだいて、白き光をあびて、碧に、翠に、緑に、私を柔らかく包み込む。ふー。なんだか眠くなってきちゃっ…た…よ…
(あれ?瑠璃子さん?)
すやすや
(あららら)
うーん、ごうちゃん♪…
(お (^^;)
(寝顔の瑠璃子さんもやっぱ可愛いなぁ…午後の授業までまだしばらくあるな…もうすこしねかしておいてあげよう…)
謎のナレーション
屋上へつづく、鉄の扉。重い扉。そのすきまから、かれら二人をうかがう、怪しい一つの影があるのであった
「うううぅ、るりこぉぉぉ。ああ、あんなにくっついて…ゆるすまじぃ」
とんとん
「えーい、いま取り込み中だ」
「あのー」
「ああっ、髪の毛さわさわなんかしてる〜おのれぇ」
「月島さーん」
「ええぃ、だれだぁ」
びくっ!
「あ、あのっ、すみません、ううっ」
「あ゛、藍原さん…」
「あの、先生がちょっとさがしてまして、こっちのほうに上がって行くのを見たってのをきいたもので…」
「そ、そうか。わかった。ありがとう、くっ、しかたない、藍原さん!!」
「は、はい」
「書記である君に生徒会長からの任務をあたえよう。彼らがよからぬ行動をおこさないよう、見張っていてくれたまえ!!! ぢゃ!」
ばたばたばた
「あ、あのっ….ああ、いっちゃった。いきなり、そんなこといわれても…彼らって…」
ひょい。
「あの2人かしら…あ、月島さんの妹の…もう一人は…だれだろう。どこかであったことが…あ、このあいだぶつかったとき(log 11参照)の…でも、他にも…」
きーんこーんかーんこーん。
「あっ、予鈴だ…どうしよう…」
おろおろ
「ん?予鈴か…瑠璃子さん、おきてー」
「うーん」
とろーん
「あ、ごうちゃんおはよー」
「午後の授業がはじまるよ」
「むー」
せのびする。ちりちり。
「さ、いこか」
「うん」
ああっ、どうしよう。こっちにきちゃう。えーと、えーと、こういうときは、どうしたらいいの。そうだっ!ここの柱の影にかくれれば… (影の声:さきに階段おりて帰ってしまえばいいとおもうんだけど…)
「瑠璃子さんよくねてたねぇ」
「えっ、そう?」
「あーあ、午後の授業なければずーーーっとあのままでいられたのになぁ」
「くすくす」
ぎぎぎぎぎぎ
どきどき。扉をひらいて二人がでてきます…このまま真っ直ぐおりていってくれればだいじょうぶですね。どきどき
とんとんとん
…ふうよかった。きづかれなかったみたい…
「あ、そうだ」
「どうしたの? 瑠璃子さん」
後ろを振りかえる。
「瑞穂ちゃん、今週末も、香奈子ちゃんのお見舞いにいくんでしょ?」
どきぃ、あ、あ、あ、何か答えないと、
「えええっえっと、は、はい、行きます」
「くすくす。もうすぐ大丈夫だと思うよ。安心してね。あ、あと、お兄ちゃんの言うことは適当に聞き流してだいじょうぶだからね」
「は、はい」
「早くいかないと遅刻しちゃうよ。くすくす。さ、ごうちゃん、いこ」
ぽかーん
・・・
「瑠璃子さん、さっきの…」
「うん、瑞穂ちゃんだね」
「…だいじょうぶかな?」
「記憶のこと?」
「うん」
「…たぶんだいじょうぶだよ。くすくす」
「…だといいけど…」
ごうちゃんけっこう心配性だね…あ、もう教室だ。
「それじゃ、またあとで」
「うん。またね」
午後の授業。新しく来たばかりの先生。この先生の授業はけっこう面白いの。説明もわかりやすいし、途中の雑談も楽しいし。教室に満ちた、電気の粒は、あちこちはねまわって、いろいろな色をだしている。明るいブルー、きれいな黄色、すてきなピンク、いつもこんな授業ならいいのにな。くすくす。
「じゃあ、次はだれによんでもらおうかな….じゃあ、月島」
ざわっ
いけない、いけない、いまどこなんだろ…電波に気をとられてわすれてたよ。私にあてる先生なんていないから…。こまったな。ごうちゃんに電波で聞いてもさすがにわからないだろうし…
(126ページの12行目…)
あ、後ろから声。だれだろ? ありがとね。
「……ほう、月島、読むのがうまいなぁ。みんな静かにききほれてたぞ」
「くすくす。ありがとうございます」
ざわざわっ
「ん? みんなどうかしたか?」
(影の声:今あかされる真実。さおりんとるりるりは同じクラスだったのだ…ということでよろしく (ぉ)
「さっきはありがとうあれ? なんだか驚いた顔してるよ」
「あ、こ、困っってたみたいだからね」
月島さんが話しかけてくると思わなかったからちょっとびっくりしちゃった。
「…うん、たすかったみたいだね」
「みたいだねって…ま、いいけど」
「ちょっと電波に気をとられてたからね」
「で、電波?!」
え?え?いったい何のこと?
「そうだよ。この時間は綺麗なんだ。(にこっ)」
どきっ…って、な、なんで?
「そ、そうなんだ、月島さんには、その、えっと、電波…ってのが見えるの?」
「うん」
どうしてだろ。月島さんが言うと、その「電波」が、本当にあって、月島さんにはそれが見えてるって気がする。……あれ? なにか、引っ掛かるのよね。なんだったんだろう。……まあいいか。
「ふ、ふーん、すごいんだ」
「…二人目だね、くすくす」
「え、なにが?」
「電波のことを変に思わなかったのが」
「そ、そうなんだ…えっと…月島さんと話したのって初めてだよね」
「…そうかもね。くすくす」
「なんだ、思ったより、ふつーに話せるんじゃない (^^;;」
「ふつうって?」
「あ、いや、ごめんなさい。えっと、なんか前からおとなしい子だよねって思ってたんだけど、いつごろだったからか、誰とも話さなくなっちゃったみたいじゃない?」
「…そうだったかもね」
「ま、まあせっかく席も近くなったことだし、これからもよろしくね」
「…よろしく (にこっ)」
どきっ…ふぅ…
…あと一時間で今日はおしまいだね………きーんこーんかーんこーん…放課後をチャイムの音だ。くすくす。いつものところにいこうっと。
つきぬけるような高い空。青く青くすきとおる。雲一つない天気。
こんな日は電波がよくとどく。空にむかって電波を放出。
ちりちりちりちりちりちりちり。
電波が空にすいこまれていく。
あ、来る。彼女が来る。いつもの階段をのぼって…いつもの扉をひらいて…
ほら、いま、そこに。
今日はとてもいい天気。雲一つない青い空。
こんな日は電波がよくとどくんだよ。
あ、今日は早いんだ。ごうちゃんの電波の力を感じる。いつもの階段をのぼって、いつもの扉をひらいて。
ほら、そこにいる。
「くすくす。今日は、はやいんだね」
「うん」
…屋上の手すりにもたれて、電波をあつめる。流れ込んでくるいろんなオモイ…
いつもの、二人の時間がすぎていく。隣にあたたかい電波を感じながら。
…もっと直接感じたいな。あ、ごうちゃんこっちむいた。微笑んでる。うん(にこっ)。ごうちゃんの体に身をあずける。
電波が直接ながれこんでくる。
そして、そして、電波じゃない暖かさを感じる。いとおしいオモイ。
そのオモイが、体温としてつたわってくる…
・・・
青から赤へどんどん変わっていく。影が長くのびていく。あ、風がでてきたかな。ちょっとさむい。ううっ私こんなところで何してるんだろう (;_;)…
回想:
「藍原さん!」
「は、はいっ」
「さっきはどうだった?」
「え、あの、特になにも…」
「そうか…実は私はこのあといそがしいんだ」
「はぁ」
「というわけで、放課後もよろしく。彼らはまた屋上にいるはずだ。ぢゃ!」
「え?え?あの〜」
すたすたすた…
「まってください〜…ああ、いっちゃった…」
はぁ…。押しによわいのかなぁ、私。香奈子ちゃんにもよくいわれてたっけ…さっきから二人全然動かないし…でもいいなぁ。あったかそう…
あ、離れた。もう帰るのかな….
あ、あ、あ、あ、あ、キ……(*@_@*)…ふぅ…これってやっぱ月島さんには言わないほうがいいのかな…あ、こっちくる。階段の下なら大丈夫かな。とたたたたた……とんとんとん。二人がおりてくる…
「…ねえ、瑠璃子さん。明日は暇?」
「…どうしたの?」
「いやぁ、どっかいっしょに遊びにいけないかなーとか思って」
「明日は香奈子ちゃんのお見舞いにいくんだ」
「あ、そうなんだ…お兄さんと?」
「ううん。一人…ねえ、ごうちゃんもいっしょに来てくれない?」
「え、僕も?」
「うん。ちょっと手伝ってほしいんだ…」
え? え? 香奈子ちゃんのお見舞いに? いったいなんで? あと、彼もいっしょって…
・・・
二人で帰る帰り道。ちょっと風がでてきたかな。手がつめたい。てぶくろいるね。
「うー、今日は寒いねぇ」
「そうだね」
「何かあったかいものでも買ってく?」
「くすくす。そうしようか」
ほかほかのおまんじゅうと、暖かいココア。
おいし。
体もぽっかぽかになったみたいだよ。飲み終わったあとのごみはくずかごへ…っと
「そろそろいこうか…」
「うん」
ぎゅ。ごうちゃんの腕にくっつく。
「る、瑠璃子さん (^^;」
「だめ?」
じーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「え、あ、いや、もちろんおっけーっす」
くすくすくす。
「あったかいな…」
「……(^^)」
あ、そうだ。…きょろきょろ
「どうしたの?瑠璃子さん」
「あ、最近はいつもここでお兄ちゃんがでてくるから…」
ちりちり…
「…今日はいないみたいだね」
「^^;;;;;;;;;;;; 生徒会関連のお仕事かなにかじゃない?」
「うん。これで安心してくっついてられるね」
ぎゅぎゅっ。 (寒い日もいいねー by ごうちゃん)
……私の家に到着。
「じゃあ、瑠璃子さん。明日は…えっとむかえにくるよ」
「うん。それじゃ」
…ごうちゃんの目。私がうつってるよ…
(瑠璃子さんが目をとじた…どきどき…byごうちゃん)
「ゆるさーーーーーーーーーーーーーーん」
あ。
「あ、月島さん、こんにちは (汗」
「はい、こんにちは…っって、君は人の家の前で何をしようとしてたんだいぃ…」
「いや、ちょっとさよならの挨拶を。あ、それじゃそろそろ。瑠璃子さん、またねー」
すたたた
「…さあ瑠璃子、寒いだろ、家にはいろ…はう」
じーーー。ちりちりちり。
「あ、あの、瑠璃子…」
まあいいや。
「そうだね (にこっ)。今日の夕飯は暖かいものにしようか」
「あ、ああ (汗)」
…(しばしの時)…
ふわぁ。そろそろねようかな。
「にゃー」
おいで。なでなで。
…ごうちゃん、また明日ね。ちりちり
(ちりちり…うん。おやすみ…)
おやすみなさい…
(終わり)